レプリコンワクチンについて。専門医が解説

2024年10月より新型コロナワクチンの定期接種が開始されるにあたり、近年話題となっている「レプリコンワクチン」について、患者様の間でも不安や懸念の声が聞かれています。
このレプリコンワクチンは、日本のMeiji Seika ファルマによって開発された新しいタイプのワクチンで、日本国内のみで認可されているという点からも、一部の方々に不安を抱かせている要因となっています。
特に、SNSやインターネット上で「接種していない人にワクチン成分が伝播する」といった科学的根拠のない情報が拡散され、これに基づきレプリコンワクチン接種者の入店や診察を拒む場所まで現れているという報告もあります。
今回は、こうした誤解を解くため、客観的な視点からレプリコンワクチンについて正確な情報をお届けしたいと思います。

レプリコンワクチンとは?

レプリコンワクチンは、従来のmRNAワクチンを改良して開発された「自己増幅型mRNAワクチン」です。
mRNAワクチンは、ウイルスのスパイクタンパク質を生成するための設計図であるmRNAを体内に導入し、それによって免疫反応を引き起こします。しかし、従来のmRNAワクチンは接種ごとに新しいmRNAを投与する必要があり、mRNA自体も短期間で分解されるため、定期的な接種が必要でした。
一方、レプリコンワクチンでは、体内に入ったmRNAが自己複製する仕組みを持っています。このため、少量のmRNAでも体内で長期間にわたってスパイクタンパク質を生成し、持続的な免疫反応を引き起こすことが期待されています。

レプリコンワクチンの仕組み

レプリコンワクチンの核心部分は「レプリカーゼ」と呼ばれる酵素です。
この酵素の働きにより、投与されたmRNAが細胞内で何度も自己複製され、スパイクタンパク質が大量に生成されます。通常のmRNAワクチンでは、1つのmRNAから1つのスパイクタンパク質が生成された後、mRNAは分解されますが、レプリコンワクチンでは複数回にわたってスパイクタンパク質が生成されます。
このスパイクタンパク質は、実際のウイルスが細胞に侵入するために使用する部分と同じですが、ワクチンによって生成されたものは感染を引き起こす能力を持っていません。そのため、体内の免疫システムはこのスパイクタンパク質を「異物」として認識し、抗体を生成します。
これにより、実際にウイルスに感染した際、免疫システムが素早く反応し、感染の拡大を防ぐことができるのです。

メリット

レプリコンワクチンの最大のメリットは、少量の接種で済むこと、そして長期間にわたって免疫効果を維持できることです。
従来のmRNAワクチンと比較すると、レプリコンワクチンは6分の1から20分の1の投与量で、同等またはそれ以上の効果が確認されています。このため、接種回数が少なくて済み、1回の接種でより長期間効果が持続するため、患者さんにとっての負担が軽減されます。
例えば、828名の日本人成人を対象に行われた臨床試験では、レプリコンワクチン「コスタイベ(ARCT-154)」とファイザー社製の従来型ワクチン「コミナティ」が比較されました。結果として、コスタイベはわずか5μgのmRNA量にも関わらず、コミナティの30μgよりも高い中和抗体価を示しました。
また、その効果は6か月以上にわたって持続することが確認されています。
具体的な試験結果は以下の通りです。

    投与後30日:コスタイベ 2125、コミナティ 1624
    投与後90日:コスタイベ 1892、コミナティ 888
    投与後180日:コスタイベ 1119、コミナティ 495
これらのデータからもわかるように、レプリコンワクチンは少ない投与量でも長期間にわたって高い免疫効果を維持できることが示されています。

臨床試験と効果

レプリコンワクチンは、日本やベトナムで大規模な臨床試験が行われており、デルタ株やオミクロン株に対しても高い有効性が確認されています。
ベトナムで行われた第3相臨床試験では、レプリコンワクチンはデルタ株に対して重症化予防効果が95.3%、発症予防効果が56.6%という結果が得られました。
また、日本での臨床試験では、オミクロン株に対してもファイザー社製のワクチンと比較して高い中和抗体価を示し、より強力な免疫反応を引き起こしています。特に、投与後180日経過しても抗体価が高く維持されている点が特徴的です。

副作用と安全性

レプリコンワクチンの副作用については、従来のmRNAワクチンと同様の症状が報告されています。一般的には、接種部位の痛み、疲労感、頭痛などが多く見られ、これらは時間の経過とともに自然に治まることがほとんどです。
ベトナムで行われた大規模な臨床試験では、16,000人を対象に安全性が確認されており、副作用の頻度は以下のような結果が得られています。

    疼痛、圧痛、頭痛、疲労感:20~40%
    局所の腫れ、発熱、関節痛、悪寒:20%以下
これらの副作用は一般的に3日以内に解消され、重大な副作用(心筋炎や心膜炎など)は確認されていません。

シェディングに関する懸念

SNSや一部のメディアで「レプリコンワクチンを接種した人が周囲の人にワクチン成分を伝播させる(シェディング)」という懸念が広まっていますが、これは科学的な根拠がありません。
レプリコンワクチンはウイルスそのものを体内で生成するわけではなく、スパイクタンパク質だけを作り出す仕組みであるため、他者にウイルスやワクチン成分を伝播させることはありません。
実際、ワクチン接種者がCOVID-19に感染した場合、ウイルスの排出量が減少することが示されており、むしろ周囲にウイルスを広げるリスクが低下することが確認されています。

まとめ

レプリコンワクチンは、少量の接種で強力かつ持続的な免疫効果を得られる次世代型のワクチンです。
従来のmRNAワクチンとは異なり、mRNAが体内で自己複製する仕組みを持っており、これにより少ない投与量でも高い免疫効果が得られます。
また、安全性についても従来のmRNAワクチンとほぼ同様であり、報告されている副作用は軽度から中等度のものが大半です。
シェディングに関する懸念についても、科学的には根拠が乏しいため、過度に心配する必要はありません。

当院では「ファイザー社製ワクチン」を採用しています

ここまでレプリコンワクチンについて解説してきましたが、当院ではファイザー社製ワクチン(コミナティ)を採用しています
レプリコンワクチンを採用していない理由は、いくつかの実務上の問題があるためです。
まず、レプリコンワクチンは1バイアルに16人分が含まれており、少人数のクリニックでは取り扱いが非常に難しい点が挙げられます。

新型コロナワクチンはどれも非常に高価であり、16人分を用意しなければならないため、余らせてしまうリスクが大きいです。

これを無駄にするとクリニックにとっては経済的負担が増え、実際の運用が難しくなります。 実際に16人のレプリコンワクチン接種希望者を同日に集めることはかなり難しいのではないかと考えられます。
また、レプリコンワクチンは治験により有効性と安全性が確認されていますが、ファイザーやモデルナのワクチンに比べると接種している人数(母数)が圧倒的に少ないという現状があります。
そのため、データの蓄積や実績においては、従来のmRNAワクチンであるファイザーやモデルナの方が優位であると言えます。
このような理由から、当院ではファイザー社製のワクチンを選択しております。
実際にファイザー製のワクチンでも予防効果、重症化を防ぐ効果は十分にあると判断しており、希望者の方にはファイザー製のワクチンを現時点(2024年10月)では投与させていただいております。

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