停留精巣とは?放置によるリスクと治療の重要性について解説

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はじめに 〜お子さまの発育に関する不安から〜

「うちの子、片方の精巣がないみたい…」「健診で『停留精巣の疑いがあります』と言われたけれど、どうすれば?」——このような不安を抱えて当院を受診される保護者の方は少なくありません。停留精巣は新生児の1〜5%、早産児ではさらに高頻度で見られる先天的な状態です。放置してしまうと将来的なリスクを伴うため、適切な時期に診断と治療を行うことが重要です。本記事では、泌尿器科医としての視点から、停留精巣の原因・診断・治療方法、そして当院での対応について、わかりやすくご説明いたします。

停留精巣とは?

通常、胎児期に精巣は腹腔内で形成され、出生までに陰嚢まで下降します。しかし、この下降が途中で止まり、陰嚢に精巣が存在しない状態を「停留精巣(cryptorchidism)」と呼びます。片側性のこともあれば、両側性の場合もあります。多くの場合は1歳までに自然下降することもありますが、1歳を過ぎても下降しない場合は「真の停留精巣」とされ、治療対象となります。

停留精巣の原因と発生の背景

停留精巣の原因は明確には解明されていませんが、以下のような要因が関与すると考えられています。

  • ホルモン異常:胎児期の性ホルモン(特にテストステロン)の分泌異常や反応性低下。
  • 機械的要因:精巣を導く靱帯(ガバナキュラム)の異常や腹壁の構造的要因。
  • 遺伝的要素:家族内に停留精巣の既往がある場合、リスクが上昇します。
  • 環境要因:母体の喫煙、妊娠中の環境ホルモン暴露など。

停留精巣によって考えられるリスクとは?

放置された停留精巣には、以下のような長期的リスクが伴います。

  • 不妊症のリスク:精巣は正常に機能するために低温環境が必要です。腹腔内にあることで高温にさらされ、精子形成に悪影響を与えることがあります。
  • 精巣腫瘍の発生率上昇:停留精巣は将来的に精巣がんのリスクが約数倍に高まるとされています(特に腹腔内にある場合)。
  • 精巣捻転のリスク:腹腔内や鼠径部の精巣は捻転を起こしやすく、急性腹症や失活の原因になります。
  • 外傷・心理的影響:陰嚢が空のままだと見た目の問題から心理的ストレスを抱えるケースもあります。

診断方法と検査内容

診察では以下のようなステップで診断を進めます。

  • 視診・触診:陰嚢と鼠径部を触診し、精巣の位置を確認します。
  • 超音波検査(エコー):皮下や鼠径部に精巣があるかどうかを非侵襲的に確認可能です。
  • MRI・CT検査(一部症例で):腹腔内に精巣が見当たらない場合や、腫瘍の精査が必要な場合に実施されることがあります。
  • 内視鏡検査(腹腔鏡):腹腔内停留精巣が疑われる場合に診断と同時に治療(固定術)も可能です。

治療方法について(手術とその時期)

停留精巣の治療には、主に手術(精巣固定術)が選択されます。

  • 精巣固定術(orchiopexy):精巣を陰嚢内に移動させ、縫合で固定する手術です。
  • 手術の適応時期:1歳〜1歳半までに行うことが推奨されており、2歳以降になると精子形成能が低下するリスクが高まります。
  • 腹腔鏡下手術:腹腔内に精巣がある場合は腹腔鏡を用いた低侵襲手術が選ばれます。
  • ホルモン療法:hCG療法なども一部で検討されていますが、効果が限定的であり、基本的には手術が第一選択です。

当院での対応について

中目黒ブロッサムクリニックでは、泌尿器科専門医が以下のような対応を行っています。

  • 精査・診断の実施:超音波検査を中心とした精巣の位置確認と経過観察。
  • 専門医療機関との連携:手術が必要と判断された場合は、日赤医療センターなど信頼ある小児外科・泌尿器科のある提携医療機関をご紹介いたします。
  • 術後フォロー:術後の発育確認や精巣機能のチェックなど、長期的なフォローアップを行います。
  • お子さまの未来の健康と成長を支えるため、私たちは丁寧な診察と説明を心がけています。

まとめ 〜早期発見・早期治療の重要性〜

停留精巣は決して珍しい疾患ではありませんが、放置することで思春期以降に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に「精巣が見当たらない」「左右で陰嚢の大きさが違う」といったサインがある場合は、早期に医療機関を受診することが重要です。当院では、泌尿器科専門医が診察・相談を承っております。お子さまの発育に関して少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

要約(重要ポイント)

  • 停留精巣とは、精巣が陰嚢まで下降していない先天的な状態を指します。
  • 1歳を過ぎても下降しない場合、将来的な不妊症や腫瘍化リスクが高まります。
  • 超音波や内視鏡検査により、精巣の位置を把握し、適切な手術時期を見極めます。
  • 治療の基本は1歳〜1歳半での精巣固定術。早期治療が将来の機能を守るカギです。
  • 当院では診断と精査を行い、必要に応じて高度医療機関との連携で安全な治療を支援しています。
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