【停留精巣の診断と治療】将来への影響まで専門医がわかりやすく解説

目次
停留精巣とは何か
停留精巣とは、本来は陰嚢内に下降してくるはずの精巣が、途中で止まってしまい、陰嚢内に存在しない状態を指します。胎児期に腹腔内で形成される精巣は、妊娠後期に鼠径管を通って陰嚢へと移動します。しかし何らかの理由でこの過程がうまくいかないと、停留精巣となります。頻度としては、正期産児で約1~3%、早産児で約15~30%とされ、生後6か月頃までは自然下降する可能性もあるため、この時期までは経過観察とする場合もあります。
停留精巣の原因
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ホルモン因子
精巣の下降にはアンドロゲンなどのホルモンが関与しており、分泌や作用の異常が影響すると考えられています。 -
解剖学的因子
精巣導帯の異常や鼠径管の構造異常によって下降が妨げられることがあります。 -
環境因子・母体因子
早産、低出生体重、内分泌かく乱物質への暴露などが関連する可能性も議論されています。
どこに精巣があるかで分類される停留精巣
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鼠径部停留精巣
最も頻度が高く、鼠径管内に精巣が止まっている状態です。触診で確認できることが多く、比較的発見しやすいタイプです。 -
腹腔内停留精巣
腹腔内にとどまっている状態で、触診では確認できない場合があります。腹腔鏡検査が必要になることもあります。 -
移動精巣(遊走精巣)との違い
一時的に精巣が引き上がる状態で、多くの場合は病的ではなく経過観察となります。
診断の流れ
診断は身体診察が中心となり、陰嚢内の触診で精巣の有無や位置を確認します。必要に応じて、超音波検査、MRI検査、腹腔鏡検査を行い、精巣の位置や状態を評価します。
治療の基本方針
停留精巣の基本治療は「精巣固定術(精巣下降固定術)」です。生後6か月~1歳半までの手術が推奨されており、精巣を陰嚢内に固定することで、体温から守り将来のリスクを最小限に抑えることが目的となります。
将来への影響
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男性不妊のリスク
高温環境に長く置かれることで精子形成が障害される可能性があります。特に両側の場合は影響が大きいとされます。 -
精巣がんのリスク上昇
一般人口と比べて発症リスクが高まりますが、適切な時期の手術で低減が期待できます。 -
精巣捻転・外傷
停留した位置によって捻転や外傷のリスクが高まる可能性があります。
治療後のフォローと将来管理
術後は精巣の位置や発育を定期的に確認します。思春期以降は自己触診の指導も重要であり、妊孕性やホルモン機能についても必要に応じて評価を行います。
当院での対応
中目黒ブロッサムクリニックでは、診察・画像検査の適応判断・専門施設への紹介を適切に行い、術前・術後フォローも継続的に対応可能です。迷われる場合もお気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
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Q:治療時期を過ぎた場合は?
年齢が高くなってからでも治療の意義があります。気づいた時点での受診が勧められます。 -
Q:大人になってから見つかることは?
稀にあります。その場合も評価と治療の検討が必要です。
まとめ(重要ポイント)
- 停留精巣は決して珍しくない先天性疾患です。
- 生後6か月以降も下降しない場合は専門医による評価が必要です。
- 推奨される手術時期は1歳前後までです。
- 放置すると男性不妊や精巣がんリスクが上昇する可能性があります。
- 適切な治療により将来リスクの低減が期待できます。
- 迷った場合は早めの受診相談が安心につながります。

