「いつもの抗生剤が効かない」と聞いたら不安に感じる方も多いでしょう。特に膀胱炎や腎盂腎炎を繰り返す方は、「抗生剤で治るはずなのに」と戸惑うことがあります。
実は、抗生剤(抗菌薬)が効きにくくなる“耐性菌(AMR=Antimicrobial Resistance)”の問題は、日常の泌尿器科診療にも深く関係しています。ここでは、その現状と私たちにできる対策を解説します。
抗生剤が効かない時代に備える ― “耐性菌(AMR)”を知ろう

目次
抗生剤が効かない?耐性菌(AMR)とは
なぜ耐性菌が生まれるのか
- 抗菌薬の不必要な使用
- ウイルス性の風邪やインフルエンザには抗菌薬は効果がありません。
- 抗菌薬の不適切な使用
- 用量・期間・薬の種類が標準治療から逸脱している場合、耐性菌を生みやすくなります。
- 細菌の進化・遺伝的変化
- 細菌が薬を分解する酵素を作る、薬の侵入を防ぐなどして薬に強くなります。
- 抗菌薬の開発スピードの低下
- 新しい抗菌薬の開発が追いつかず、治療の選択肢が限られています。
泌尿器科と耐性菌の関係
泌尿器科では、膀胱炎・腎盂腎炎・前立腺炎などで抗菌薬を使うことが多くあります。
細菌が耐性を獲得すると、これまで標準的に使われてきた抗菌薬では治療が難しくなることがあります。そのため、泌尿器科での診療でも「抗菌薬を乱用せず、適切に使う」意識が非常に重要です。
細菌が耐性を獲得すると、これまで標準的に使われてきた抗菌薬では治療が難しくなることがあります。そのため、泌尿器科での診療でも「抗菌薬を乱用せず、適切に使う」意識が非常に重要です。
耐性菌拡大によるリスク
- 感染症が治りにくくなり、治療期間が長引く。
- 治療費や入院期間が増える可能性がある。
- 重症化や合併症のリスクが高まる。
- 社会全体として「効く薬が限られる」状況に陥る。
日本では、このまま対策を取らなければ2050年には年間1,000万人がAMR関連の死者になる可能性があると報告されています。泌尿器科でも繰り返す感染症治療が困難化するおそれがあります。
初期のサインと注意点
- 膀胱炎・腎盂腎炎が長引く、改善しにくい。
- 抗菌薬を使用しても再発や症状が続く。
- 過去に抗菌薬を何度も使用した、または複数の種類を使ったことがある。
これらの状況がある場合、「通常の抗菌薬で十分か」「耐性菌を想定すべきか」を医師と相談することが重要です。
抗菌薬の適正使用とできること
- 医師・薬剤師の指示通りに服用する
- 自己判断で中断しない。
- ウイルス性疾患には抗菌薬を使わない
- 風邪やインフルエンザは抗菌薬では治りません。
- 不要な抗菌薬使用を避ける
- 軽症時には医師と必要性を確認する。
- 感染予防を習慣化する
- 手洗い、水分摂取、排尿習慣の改善など。
- 過去の抗菌薬使用歴を医療機関に伝える
- 診断・治療に重要な情報になります。
当院での対応
中目黒ブロッサムクリニックでは、泌尿器科診療において次のような取り組みを行っています。
- 初診時に抗菌薬使用歴や再発の有無を丁寧にヒアリング。
- 尿培養・薬剤感受性検査を実施し、必要に応じて耐性菌を想定した治療を検討。
- 狭域スペクトラム薬剤を優先し、適正量・期間を遵守。
- 薬の選択理由や服用期間、再発時の対応を明確に説明し、理解を共有。
抗菌薬が効きにくいと感じても「耐性菌だから治らない」とは限りません。検査と適切な治療を進めることが大切です。
まとめ・受診案内
- 抗生剤が効かない“耐性菌”は、日常の泌尿器科診療にも関係しています。
- 抗菌薬の適正使用は、将来の自分と社会の健康を守る行動です。
- 症状が長引く・再発を繰り返す場合は、検査・治療のご相談をおすすめします。
- 当院では尿培養・薬剤感受性検査を通じて耐性菌にも対応しています。
どうぞお気軽にご相談ください。

